正月
例年、1月1日は私の親族の集まりがあり、
妻の親族とは2日もしくは3日に会っていた。
昨年はリゾートホテルでやったのだが、
今年は妻の病気のことがあるので、
わが家でやってもらうことにした。
妻は4人姉妹の2番目だ。
いつも病院に付き添ってくれるのは3番目。
きょうだいたちは、みな妻の病気のことは知っている。
知らないのは、子どもたちと、
妻の父だ。
妻の母は、3年前に他界した。
突然の死だった。
好物の牡蠣フライを食べて、
寝ている間に静かに逝った。
夫である妻の父は、
そばに寝ていて気づかなかった。
2人暮らしが独り暮らしとなって、
妻の父は、孤独だった。
娘たちが入れ替わり義父のもとを訪れたが、
孤独に変わりはなかった。
ある日、義父は大量の血を吐いて、
トイレで気を失った。
機械嫌いの義父を、
娘が持たせた携帯が救った。
義父にしては珍しい携帯の発信が、
3番目の娘の心をざわつかせたのだ。
胃に大きな孔が開いていたそうだ。
口から溢れるほどの大量の血。
義父の孤独は、
後悔で埋められていたのだろう。
胃が三分の一になってからも、
帯状疱疹や、
潰瘍で何度も医者の世話になった。
「病は気から」
は、義父を見ればよくわかった。
そんな義父だから、
娘たちは、内緒を決め込んだ。
妻は、私が贈ったカツラをかぶった。
わが家にしては珍しい、大勢の来訪者。
食べきれないほどのご馳走。
次々と空くビール。
小さな子どもたちも大はしゃぎだ。
恒例のトランプの休憩時間に、
みかんをむきながら、
義父が唐突に言った。
「あんた、なんか若返ったな」
妻は、みかんを噴出さないように笑い、
4人の娘たちは、
とっさに、目を合わせないように四方を見た。
「あらー、おじいちゃん、ほんとー?」
妻がニカニカしながら言った。
明らかにおもしろがっている。
「髪切ったせいじゃない?」
予め用意してあった台詞を言うと、
義父はすぐに納得したようだった。
「そうか。ずいぶん感じ変わったと思った。若いね。元気そうだ」
義父がまたみかんをむきはじめると、
4人の娘たちが、
ちょっとずつ、お互いに目線を合わせた。
妻の親族とは2日もしくは3日に会っていた。
昨年はリゾートホテルでやったのだが、
今年は妻の病気のことがあるので、
わが家でやってもらうことにした。
妻は4人姉妹の2番目だ。
いつも病院に付き添ってくれるのは3番目。
きょうだいたちは、みな妻の病気のことは知っている。
知らないのは、子どもたちと、
妻の父だ。
妻の母は、3年前に他界した。
突然の死だった。
好物の牡蠣フライを食べて、
寝ている間に静かに逝った。
夫である妻の父は、
そばに寝ていて気づかなかった。
2人暮らしが独り暮らしとなって、
妻の父は、孤独だった。
娘たちが入れ替わり義父のもとを訪れたが、
孤独に変わりはなかった。
ある日、義父は大量の血を吐いて、
トイレで気を失った。
機械嫌いの義父を、
娘が持たせた携帯が救った。
義父にしては珍しい携帯の発信が、
3番目の娘の心をざわつかせたのだ。
胃に大きな孔が開いていたそうだ。
口から溢れるほどの大量の血。
義父の孤独は、
後悔で埋められていたのだろう。
胃が三分の一になってからも、
帯状疱疹や、
潰瘍で何度も医者の世話になった。
「病は気から」
は、義父を見ればよくわかった。
そんな義父だから、
娘たちは、内緒を決め込んだ。
妻は、私が贈ったカツラをかぶった。
わが家にしては珍しい、大勢の来訪者。
食べきれないほどのご馳走。
次々と空くビール。
小さな子どもたちも大はしゃぎだ。
恒例のトランプの休憩時間に、
みかんをむきながら、
義父が唐突に言った。
「あんた、なんか若返ったな」
妻は、みかんを噴出さないように笑い、
4人の娘たちは、
とっさに、目を合わせないように四方を見た。
「あらー、おじいちゃん、ほんとー?」
妻がニカニカしながら言った。
明らかにおもしろがっている。
「髪切ったせいじゃない?」
予め用意してあった台詞を言うと、
義父はすぐに納得したようだった。
「そうか。ずいぶん感じ変わったと思った。若いね。元気そうだ」
義父がまたみかんをむきはじめると、
4人の娘たちが、
ちょっとずつ、お互いに目線を合わせた。





