グロテスク

窓のない部屋だった。

不織布が解かれ、密閉容器の蓋が外れると、妻の胸がいた。

黄色がかった脂肪と赤い組織は大学ノートより大きく、だらしなく広がっていた。

その上に張り付いた葉状に切開された皮膚の中央に小さな乳首があり、

すぐ上に横一線の切開口が割れていた。



「これが奥さんのガンです。触ってみますか?」



指を伸ばそうとした私を制して、

主治医が滅菌済みのピンセットを手渡した。

伝わる感触を強いて言えば、壁だ。

ザラザラと硬い感触。

がんちゃんは白かった。




センチネルリンパ節は、青く染まってしまった。

転移の証拠だ。

リンパはカクセイされ、

小さなケースに周囲の脂肪と共に収められていた。




妻の脇の下は、

治療開始時には、ボコボコといくつも腫れていたのだそうだ。

先生も、内緒にしておくとは、わかってらっしゃる。




私を。





今後の予定を聞きながら、

容器が、また不織布にくるまれていくのを見ていた。









検体に出さなきゃ、もらえたのだろうか。




そんなことを思いながら。

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コメント

No title

ご覧になったんですね。
私のガンちゃんは誰の目にも触れる事はなかったようです。
去年、実家の母親が卵巣浮腫で摘出手術を受け、その取り出した卵巣を見ました。
癌があったわけではなかったけどその時を思いでしました。
私の癌はあのまま検体に出されたのかな?
今、ふとそんな事を考えました。



奥様はどうですか?
早く退院できますように・・・。

No title

奥様は
がんちゃんを見ましたか?
転移、してたんですか・・
「以外な事に11個のうちに転移がないんですよ!」
こんなセリフ言われました。
以外ってなによ!
理人さん
これから闘いが始まりますよ!


姉は吐気で・・・

グロテスクと言う言葉に反応しました。
私も最近の記事で自分の再建前の事でグロテスクだと書いてたので。
姉は検体を見たら吐き気をもよおし、ちゃんと見れなかったそうです。
私は自分で見たかった。失敗したと思いました。
左右二度もチャンスがあったのに。

ありがとうございます

「私たちのような思いを他の人たちがしなくて済むのならば」これは確かにそうなのですが、ただ私のような手遅れ組みがいうならともかく、早期発見できて例え乳房を失っても(見かけは残念かも知れないけれど)明日を生きていかれること(中身に損傷はないんだよ)を手にした方々が現状を肯定的に表せる言葉があればいいなぁと探しています。(敢えて精神面は置かせてください)
理人さんの粘り腰の展開に感動しています。
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Author:endlessavemaria
こんにちは、理人(Lied;リート)です。
妻は50代前半、私は40代前半です。


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