叱らないで

リンパ節を取った割にはむくみもなく、抗がん剤治療を続けながらも、


幸せで平穏な日々を送っている。


再発のことはいつでも不安だが、それは私だけの不安で、妻は

「もうがん治った。わかる」


と言っている。何の根拠だよ。


「お風呂のとき以外はがんのことは忘れてるな」


という妻は、私と娘の関係が悪くなることだけを心配している。


私は、「相手が悪いことしているわけじゃないのに失礼な態度を取る」というときに、当然厳しく叱る。


成績が悪くても、手伝いができなくても、無駄遣いをしても叱らないが、


失礼な態度、とくに相手が親切だった場合にそうしたときは、後で鬼の時間が待っている。
妻は、父親は常に甘くいて欲しいのだが、他人の親切を踏みにじっておいて、自分の欲求は満たしたいなど、到底許せるものではない。

そこが、うちの夫婦の折り合えない場所だ。
私は、他人と話ができない、今で言うSAD(社交不安障害・社会不安障害)であった。

今の私があるのは、生意気で可愛げのないひねくれた私に、親切をしてくれた人たちのおかげだ。

だから、どうしても、「相手をみて、相手に価値を感じないと、親切にされても不愉快な態度で返す」というようなことは、許せないし、放っておいてはいけないと思うのである。
もし、そこで叱れないのなら、私は何をも叱る気がしない。子どもの機嫌を窺うなど、ごめんである。

注意したり叱ったりしない優しさって、私には気色悪いものだ。

そう私が意気込んで話すと、妻はいつも寂しそうにする。

「いいよ。そうだね、パパの子だもんね」

それを聞くたびに、ハッとする。私は、叱ってないときは、何をしていただろう。

スカッと気持よく叱れるだけの貯金が、最近なかったような気がする。
「いつかね、思い出すよ。優しかったパパのこと」

たまには、くだらないおしゃべりでも付き合わないとな。
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こんにちは、理人(Lied;リート)です。
妻は50代前半、私は40代前半です。


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