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治療拒否2

私には訳が分からなかった。


副作用が少なく効果が高く、しかも適用できる人間と望んでも適用できない人間とがいる新薬。


「値段高い」という最大のボトルネックが、保険適用となって瓦解したそのときもなお、妻は治療費と点滴する血管の2つを気にしていた。


「命より血管かいっ!」
とよくつっこんでいた気がする。


そんな妻をハーセプチン治療に向かわせるため、私は職場に掛け合うことにした。


私は公務員を辞めて転職したのだが、給料の安さといったら、自慢できるほどである。


公務員がいちばん羨ましがられた月日、私は後悔をしないようにボーナスのニュースになるとチャンネルを変えていた。


そんな私も転職先で十年以上奉公して、少しばかりは給料を上げてくれと言ってもおかしくないくらいは働いてきたつもりだった。


せめて、妻が病気治療の間だけでもなんとか、という気持ちだった。


普通の会社なら考えられないかもしれないが、うちの会社は、もとの給料が安いために、時折個別の家庭の事情に配慮してきたのである。


例えば、十数年前、バブルの投資が裏目に出て業績が悪化した年、私の手取りは八万円だった。そのとき、それで暮らせない社員は、それまで通りの給料だった。


我が家は共働きで妻の店もまあまあ繁盛していたから、会社のために我慢していた。


だから、今度は我が家の番だ、と私は思った。


会議の日(そんな個別事案も会議になる)、私は素直に窮状を訴えた。


しかし、社員の反応はひどく冷たかった。


「なぜもっと高い保険に入っておかなかったのか」


「待遇を上げるなら土日返上の若い社員からではないのか」


「気の毒とは思うが会社は関係ない」


私は自分の甘さを恥じた。私の業績は、思ったより評価されていなかった。


私は、もし待遇を僅かでも改善してくれるならば、何倍にもして返すつもりだと言った。必死だった。


すると副社長が、「お前のやる気が買えるなら安いものだ」と態度を変え、私の給料は上がることになった。


役員会も通った日、私は少し、気分がよかった。

妻に月額いくらほど上がりそうだと報告した。


「パパは会社から信頼されてるんだね」

妻は喜んだ。

そして私が聞きたかったことを自分から切り出した。

「私、そのハーなんとかをやるよ」


飲めないたちだが、このときばかりは酒でも飲みだい気分だった。

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