母の入院 2

母の入院が決まったそばで、父が腸閉塞のような症状の発作をおこし、父が先行入院になった。


母と入院が重なり、夫婦揃って入院で、留守番もいらなくなったかと思いきや、


帰宅したばかりの母に「あのう、ご主人が帰ると言ってきかないんですが…」と電話。


母、落胆。


一難去らずにまた一難。


心臓押さえて電車とタクシー乗り継いで父を迎えに行ったのだろうか。


大腸癌とでも思ったか。まったく。


癌でもキリリと生きてる人はたくさんいるのに。

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母の入院

母の冠動脈に狭窄が見つかり、10年前と同じように、手術することになった。


「きょうだいで話し合ってください」と母からメールがきた。


アルツハイマーの父と実家で過ごすことを言っているのだ。


「いいチャンスだからゆっくり養生してください」


安心させるためにメールを送った。


癌に心臓にアルツハイマー。成人病包囲網である。


父母には、妻が癌であることは伝えていない。不自然だが1年10ヶ月、妻を会わせていない。母は何かは感づいていると思うが、教えないのも孝行だと思ってくれ、お袋。


と思ったら、ストレスからか、父が腸に異常があって入院になったらしい。

母の入院、来週なのに。合わせてくれればいいのに。


こうなると病気合戦の様相である。


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ライオンキング

原宿で買った買い物袋を両手に下げて、私と娘は汐留に向かった。

日テレで待ち合わせて劇団四季の「ライオンキング」を見るためである。


妹のおごりで、娘と姪たちを会わせてあげようという企画である。

私はミュージカルというものがよくわからず、生まれて初めてのファースト初体験であった。


ミュージカルで驚いたこと


1舞台の下にオーケストラがいること


2 ポップコーンを売ってないこと


3 チケットが一枚一万円以上すること


4 真ん中に休憩時間があること


5 歌ばっかり歌っていること


つまり、ミュージカルは映画館と違うのであった。


私は二階席の最前列で閉所恐怖と戦っていたが、娘は観劇に感激したようであった。


前半の最後、子役と交代で、成長した主人公役の若者が現れた。


「♪関係ないさぁ〜」

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娘と原宿

会社の夏休みに入って、私は朝から娘と原宿にいた。


ジャニーズショップの整理券をゲットするためである。


朝8時台に並んで、10時半入場の整理券は上々であろう(夏休みの場合)。


集合場所である明治神宮前駅3番出口前の小さな広場に、女子中高生諸君に混じって、ただ独りのオジサンである。


ボヤッキーである。


懐かしきイタリアントマトで時間を潰し、定時に入店できたものの、ここでも更にオジサンただ独り。


ひしめきときめく女子の中で、ボヤッキーはボヤいていた。


「WEBで売ってくれよジャニーズぅ」


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ハーセプチン投与

仕事中にメールが入った。

「パパの言ってたとおりの治療になったよ」

タキソテールにハーセプチンを加えた治療が始まったのだ。


妻は治療期間を短くしたかったし、高額な医療費をかけたがらなかったので、ハーセプチンを渋っていた。


特に私の会社が特別手当て案の「審査方法」を検討するはずの場で案を「撤回」したため、そのことは妻を意固地にさせ、私をかなり深く失望させた。

今度会社が苦しくなったとき、以前のように頑張る自信がない。


ハーセプチンは無理だと思って覚悟していた。私も妻も体の免疫が落ちていた。


最終的に、私と妻は担当医師に任せることで一致した。医師は術後補助療法としてハーセプチンを使ったことはなかったらしく、直前まで前向きな発言はなかった。

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転移しても生きられる時代に

「はい」


私が与えるサプリメントを、妻は素直に飲んでいる。


こんなに素直なことは、マッサージのときに「次左足」と言ったときの反応くらいなもので珍しい。


日光にも適度に当たっている。


サプリメントや健康食品や民間療法に頼る人の気持ちがわかる。


化学療法を主に、ハーセプチンを再発予防にやって、ビタミンDとカルシウムを摂取させて、なるべくマッサージしたりして、時の過ぎるのを待つつもりだ。


再発リスクは高いので、再発したときの心の準備もしているつもりだ。


ペコさんの再発は身内と同じくらいの近さで感じている。


今年来年くらいに厚労相がアバスチンを転移性乳がんに対して保険適応を認めてくれればいいのだが。


再発後に5年以上10年以上生きる人が増えるだろう。


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寝苦しい夜に

今年は妻が喉を痛めないよう、就寝時のエアコンは家中禁止である。


地球のために家計を6%助けようという運動でもある。



寝苦しい〜。


「ねぐねぐねぐねぐねぐ」


と寝苦しいを略してみても寝苦しい。


各自支給の扇風機だけが救いである。


但し、絶対に首振りにしないと怒られる。

昭和前半生まれは、「扇風機を固定して寝ると死ぬ」「焼き魚のコゲでガンになる」「霊柩車がきたら親指隠す」と刷りこまれているので、風が次に来るまでに、イスカンダルまで行けそうである。


「エアコンかけたいんだけど」


地球温暖化を進めても我が身を冷やしたい現代人のエゴである。


「だめー。そのかわりいいことしてあげるよ」


妻が取り出したるは、100円ショップで買ってきた霧吹き。
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これでいいのだ

「あぁ、わたしと一緒だな、この人」


生前、食道がんを宣告された赤塚不二夫が、お湯割り焼酎片手に語る会見を見ながら、妻が呟いた。


「これでいいのだ」


節制をしなければ一年後に死ぬと宣告されても、「それでいいです」とばかりに酒を飲み続けた赤塚は、脳の障害で意識が戻らぬまま数年を経て、最期は肺炎で死んだ。


「これでいいのだ」


何が良いのか私にはよくわからないが、自分で生きてきた人間にとって、自分が良しとしたものは、それで良いことになるのだと妻は言う。


「他人のせいにする人は不幸ね」


そう言いながら、妻はちょっと真顔で、


「あと15年生きたらいいよね、パパ?」


と問いかけてきた。


「うん、まあ、そうだね。そうかな?」


有無を言わせない感じで、そんな返事しかできなかった。
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手相

「手相ってさ、信じてるわけじゃないけど、他に比べて当たるよね」


女性の占いに関するコメントは、見極めがつくまで反論してはいけない。


「テレビでやってたんだけど、左の手に×みたいな印がある人は、神秘的なツキがあるらしいよ」


齋藤某の言うところの「文脈力」とは、このような場で試されるのだ。


「それがさ、私いままで気付かなかったんだけど、何気無く見てみたら、あったのよね。ほらっ!」


小さい子が作った泥団子が完成したとき、見に行かない大人がいるだろうか。


「ね〜。だからかあ〜って思った。私って不思議なほどツイてるんだよね。占いは信じてないんだけどね」


目が斜め上を見ている。

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ゼロ

「ゼロ。ゼロだ」


灰色の気分がやってくると、自分に言い聞かせる。


状況はプラスでもないがマイナスでもない。今から何かをはじめていくために、自分をリセットする。


高望みは、リセット前にしてはいけない。リセット前に高望みすれば、きっと失望する。

諦めも、リセット前にしてはいけない。きっと何もかも諦めてしまう。


私にはまだできることがある。私は終わっていない。


ゼロ。ゼロだ。

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こんにちは、理人(Lied;リート)です。
妻は50代前半、私は40代前半です。


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